※菫さんは喫茶店でアルバイトをしています
菫「新しいケーキ……ですか?」
店長「ええ、新しいコーヒー豆を仕入れるので、セットにする新ケーキを考えてほしいんですが」
菫「しかし、私はあまりそういうのに詳しくないので、考えると言われましても……」
店長「ああ、別にレシピを考えてほしいとかそういう訳ではなくて、こういうのが食べたいな程度で結構ですよ」
菫「は、はぁ……」
店長「常連のお友達の皆さんの意見なんかもいただけると助かります、お手数ですがよろしくお願いしますね」
菫「……というわけなんだが、何か意見くれないか?」
やえ「ケーキって言ってもねぇ……あそこの喫茶店って結構ケーキのメニュー多くなかった?」
真佑子「はい、確か通常メニューだけで十個くらいあったような」
ハオ「それに加えて日替わりセットもありますからね、それだけで通いつめたくなるくらいです」
菫「そうなんだ、ショートとかモンブランとか、主だったメニューは既にあるから、なかなかアイディアが出なくて」
やえ「……十分じゃないの?」
菫「あのマスターはサービスに対して孤高の求道者みたいなスタンスでいるから、満足することなどないんだ」
やえ「サービスを提供する側が満足しないってよく考えなくても意味分かんないな……」
真佑子「孤高の求道者って言うと俺より強い奴に会いに行く人のイメージしか出てこないんですけど……」
ハオ「マスター(達人)」
菫「あながち間違ってはいないかもな、接客のために分身したりするからあの人」
やえ「ちょっとどころじゃなく人間止めてない?」
菫「あながち間違ってはいないかもな、接客のために分身したりするからあの人」
やえ「ちょっとどころじゃなく人間止めてない?」
菫「多治比はお菓子作るの得意だろ、何かアイディアないか?」
真佑子「た、確かに作りますけど所詮アマチュアという意味ではあまり変わらない気がします」
ハオ「ですが、少なくとも日頃おかゆばっかり作っている私よりは洋菓子には詳しいでしょう」
やえ「今さら中国人らしさをアピールされても反応に困るんだけど……」
菫「私たちよりよっぽど日本人臭いよなこいつは」
ハオ「怎麼了?」 ニコッ
やえ「中国語での笑顔の圧力が怖いからやめい」
真佑子「うーん、新しい豆ってどういうコーヒーなんですか?」
菫「え? ああ、確か名前はエレファント、なんだったか? 酸味と甘みがあるコーヒーだったな」
やえ「調べたらそれっぽいの出てきたけど、これかな? ラオスのエレファントマウンテンっていうやつ」
ハオ「ラオスと言えば象ですからね、それじゃないですか?」
菫「比較的苦くないコーヒーだったから、軽めのあっさりした味がいいかもしれないな」
ハオ「そうですね、甘すぎるとコーヒーのほうが負けてしまいますし」
真佑子「そうするとやっぱりシフォンケーキみたいなものがいいですかね? すみません、ありきたりな意見で」
菫「まぁいいんじゃないか? そういうシンプルな方向性がいいっていう意見だけでも十分だ、たぶん」
真佑子「いや、もうちょっとこうアクセントというか、オリジナリティある意見を言わないと申し訳ない気が……」
やえ「あんたさっき自分でアマチュアって言ってたじゃんか、別に気にする必要ないでしょ」
真佑子「そう、麻雀でもそう、私はいつだって特徴がなく、そして結局カマセになる運命……ふふ……」 ドヨーン
菫「……なんでこいつはいきなりトラウマを発症してるんだ」
やえ「自分で自分の地雷踏みに行くとか器用なことするな……」
ハオ「大丈夫ですよ、心配しないでください真佑子」
真佑子「ハオちゃん……?」 グスン
ハオ「真佑子の噛ませっぷりは天下一品です、自信を持ってください」 肩ポン
真佑子「酷くない?!」
やえ「そっち肯定すんの!?」
菫「なんであえてトドメ刺しに行ったんだ……」
ハオ「人聞きが悪いですね、せいぜいバンジージャンプで躊躇してる人の背中を押したくらいのレベルですよ」
やえ「いやそれ十分悪の所業だかんな!?」
この一行で店長のビジュアルが東方不敗マスターアジアになった。