※中学生のニワチョコが同棲していないという前提に基づいた新感覚SSです
彼女の考えていることが、私にはよく分からない。
「ねぇ、ナオ」
「どうしたの、会う約束をしていたのにいざ来てみたら学校の宿題が山ほど残っていてそれどころじゃなかった挙げ句、それを手伝わせている高橋知代子さん」
「説明口調から圧しか感じない」
「話している暇があるなら少しでも手を動かしなさいな」
日が照りつけている間は暑さを感じるものの、冷房をつけるには少しだけ物足りない、そんな梅雨の合間のよく晴れた日。
対面で宿題を一緒に片付けてくれている友人、丹羽菜緒子の皮肉をいつものように聞き流しながら、私はため息混じりに脳内でこっそり呟いた。
丹羽菜緒子。
彼女と初めて顔を合わせたあの大会から、もう付き合いは何年になるんだろうか。
慕と心の試合を応援しながら気の置けない友人になって。
下宿先を探してまで一緒の学校に進学して。
麻雀部に入って、最も身近にいるライバルになって。
小学校からこっち、彼女と私は決して浅くない付き合いをしてきた自負がある。
だというのに、未だに彼女の考えていることがよく分からないと感じてしまうことがあるのだ、私には。
いや、なにも全く心が通じ合っていないというわけじゃない。
今は紅茶じゃなくてコーヒーが飲みたい気分なんだろうなぁとか、先輩に僅差で負けて苛ついてるけどそれを隠したがってるんだろうなぁとか、そういうことはなんとなく分かる。
けど、本当に大事な所というか、心の深層とでも言えばいいのか。彼女のそんな部分は、私にはよく見えてこない。
隠し事をされていると感じるわけでも、距離があると感じるわけでもないのだが。
なんというか、一番大事なことを彼女は私に隠している。
そんな気がしてならないのだ。ぐぬぬ。
「それにしてもこの宿題、一週間前から出てたじゃない、なんで手をつけていなかったの」
「特に理由はありません」
「そこはむしろあって欲しかったわ」
「強いてあげるとするなら、部内戦が大詰めだから、最後の追い込みに熱が入りすぎたのかもね~」
「部活のあと毎日一緒に帰ってる私はもう宿題を終わらせているのだけど、何か言うことはないのかしら」
「なるほど、つまりナオが私をこうして手伝ってくれるところまでが予定調和、天命であったと」
「高橋」
「はい」
「……さっさと片付けなさい、今日は買い物に行くつもりで来たのよ、私は」
「はいはーい」
あ~もう、こんな益体もないことを考えてると頭がこんがらがってしまう。
とにかく、宿題という名のこの難物を早いところやっつけてしまおう。
私だって久しぶりのナオとのお出かけ、とても楽しみにしていたんだから。
私が考えていることは、彼女に知られたくない。
目の前で暑さのせいだけではないだろう冷や汗をかきつつ、あーでもないこーでもないと問題集を解いている知代子を見ながら、私は内心で思いを新たにする。
気づけば長い付き合いになった。
小学生の頃に出会ってから、彼女とは決して浅くない付き合いを続けてきた。
まさか彼女が愛知まで来てくれて、一緒の中学に通うことができるだなんて思ってもみなかったが、同じ学び舎で同じ時間を過ごし、部活から帰途に至るまで、四六時中一緒にいる。
彼女と過ごす時間はとても楽しい。
そして、だからこそ私は、彼女に心の最後の一線を越えさせてやれずにいる。
だって恥ずかしいじゃない。
こうして一緒の時間を過ごすだけで、私が満たされているだなんて。
私のプライドにかけて、こんなことを彼女に知られるわけにはいかないから。
彼女の考えていることが、私にはよく分からない。
「ねぇ、ナオ」
「どうしたの、会う約束をしていたのにいざ来てみたら学校の宿題が山ほど残っていてそれどころじゃなかった挙げ句、それを手伝わせている高橋知代子さん」
「説明口調から圧しか感じない」
「話している暇があるなら少しでも手を動かしなさいな」
日が照りつけている間は暑さを感じるものの、冷房をつけるには少しだけ物足りない、そんな梅雨の合間のよく晴れた日。
対面で宿題を一緒に片付けてくれている友人、丹羽菜緒子の皮肉をいつものように聞き流しながら、私はため息混じりに脳内でこっそり呟いた。
丹羽菜緒子。
彼女と初めて顔を合わせたあの大会から、もう付き合いは何年になるんだろうか。
慕と心の試合を応援しながら気の置けない友人になって。
下宿先を探してまで一緒の学校に進学して。
麻雀部に入って、最も身近にいるライバルになって。
小学校からこっち、彼女と私は決して浅くない付き合いをしてきた自負がある。
だというのに、未だに彼女の考えていることがよく分からないと感じてしまうことがあるのだ、私には。
いや、なにも全く心が通じ合っていないというわけじゃない。
今は紅茶じゃなくてコーヒーが飲みたい気分なんだろうなぁとか、先輩に僅差で負けて苛ついてるけどそれを隠したがってるんだろうなぁとか、そういうことはなんとなく分かる。
けど、本当に大事な所というか、心の深層とでも言えばいいのか。彼女のそんな部分は、私にはよく見えてこない。
隠し事をされていると感じるわけでも、距離があると感じるわけでもないのだが。
なんというか、一番大事なことを彼女は私に隠している。
そんな気がしてならないのだ。ぐぬぬ。
「それにしてもこの宿題、一週間前から出てたじゃない、なんで手をつけていなかったの」
「特に理由はありません」
「そこはむしろあって欲しかったわ」
「強いてあげるとするなら、部内戦が大詰めだから、最後の追い込みに熱が入りすぎたのかもね~」
「部活のあと毎日一緒に帰ってる私はもう宿題を終わらせているのだけど、何か言うことはないのかしら」
「なるほど、つまりナオが私をこうして手伝ってくれるところまでが予定調和、天命であったと」
「高橋」
「はい」
「……さっさと片付けなさい、今日は買い物に行くつもりで来たのよ、私は」
「はいはーい」
あ~もう、こんな益体もないことを考えてると頭がこんがらがってしまう。
とにかく、宿題という名のこの難物を早いところやっつけてしまおう。
私だって久しぶりのナオとのお出かけ、とても楽しみにしていたんだから。
私が考えていることは、彼女に知られたくない。
目の前で暑さのせいだけではないだろう冷や汗をかきつつ、あーでもないこーでもないと問題集を解いている知代子を見ながら、私は内心で思いを新たにする。
気づけば長い付き合いになった。
小学生の頃に出会ってから、彼女とは決して浅くない付き合いを続けてきた。
まさか彼女が愛知まで来てくれて、一緒の中学に通うことができるだなんて思ってもみなかったが、同じ学び舎で同じ時間を過ごし、部活から帰途に至るまで、四六時中一緒にいる。
彼女と過ごす時間はとても楽しい。
そして、だからこそ私は、彼女に心の最後の一線を越えさせてやれずにいる。
だって恥ずかしいじゃない。
こうして一緒の時間を過ごすだけで、私が満たされているだなんて。
私のプライドにかけて、こんなことを彼女に知られるわけにはいかないから。